「こどもの育ちを地域で支える仕組みを作りたい」渡邉玲子さんの場合

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watanabe
都内で、社会教育団体「あかくら(赤ちゃんとの暮らし研究会)」を運営する保健師、渡邉玲子さんは、北欧のスウェーデンで子育てを経験したという、ユニークな経歴の持ち主だ。こどもを抱えたり背負ったりするためのグッズ、「抱っこひも」の研究家でもあるそうで、商品開発や販売なども手がけている。
社会全体でこどもの育ちを支える北欧の文化
学生時代に友人から、親の病気により進学をあきらめる事を告げられた渡邉さんは、家庭や環境が、個人の将来を左右する事がある」と痛感し、保健師の道を歩もうと決意した。
聖路加看護大学を卒業後、聖路加国際病院の公衆衛生看護部(現在は外来部門に吸収)で訪問介護や育児指導などに携わりながら、自らも結婚と出産を経験した。ところが、当時は育児休暇などの仕組みがなかったため、退職せざるを得なくなった。また、専門家と自負していた自分自身が子育ての孤立感と不安にさいなまれた。「いったい、なぜ?」漠然とした疑問を感じたまま渡邉さんは、ご主人の仕事の都合で福祉国家として名高いスウェーデンで子育てする事になった。
年間を通して日照時間が少なく、冬は気温がマイナスの日が続く同国では、くる病や精神疾患を予防するために、親子とも四季問わず外で過ごす事を良しとし、その環境も整備されていた。また、急な病気にも対応できる家庭内看護力と充実した救急体制には目を見張った。 地域の赤ちゃんから障害児までの誰もが信頼している地域ナースの存在や、その質の保障をしている全国規模で毎年開催される研修システムにも驚いた。男女ともに取得するのが当然の産後休暇、移民問題を抱える中での充実した産後家庭訪問や両親教育等は、文化も人種も言葉も違う夫婦が「親になる」のを支える社会システムがあった。更に、高福祉高負担の同国では、働ける人は働く、つまり、育児休暇明けは復職する事や保育園に入る事も当たり前という子育て。時間給労働が通常で、労働時間は午後4時まで、こどもの病気による遅刻早退欠勤は親として当然という労働環境も、こどもと親が共に過ごす時間を保障していた。更に、地域では子連れ不可の店やコンサートホールも多く、夫婦がベビーシッターを利用して出かけるのが中流階級家庭では普通で、大人が親としての適応するのを支える環境が整備されていた。「ベビーファースト」と言われている同国での子育て経験は、保健師として、また3児の母として日本の子育てを客観的に見るきっかけとなった。

出来て当たり前の日本の子育て
帰国後、個人事業主として都内三区の新生児産婦訪問指導事業を受託し各家庭を回る日々で、渡邉さんは、日本とスウェーデンの子育ての違いを感じる中、何が正しいという訳ではなく「子育ては文化」である事を実感した。こどもの育ちを社会で支える方法は、その地域で違うのは当然である。あえて言うなら、スウェーデンは全て未熟なこどもの育ちを、誰がどこでどのように支えるかを社会全体で考えている国。日本はこどもを育てるのが基本は母親で、女性は育て方を知っているのが当たり前、それを社会がお手伝いしましょうというスタンスと感じたと言う。
渡邉さんは、こうした日本の社会状況の中で、自分に出来る事は何かを考えた。「私自身は子育ての知識は沢山あったが、経験値が少なかった。一方、夫は、知識は少なかったが沢山の親戚の中で育ち経験値が高かった。更に、先輩のご近所さんや、保育園ママとの信頼関係の中でのべったりしないゆるいネットワークが、私を母として育ててくれたと気づいた」と言う。そこで、こどもを育てる大人が求めている、知識・経験・ゆるい支え合いが出来る場として、社会教育団体「あかくら」を設立。主な事業内容は交流事業「赤ちゃんとランチ」。そして、子育ては学ぶものであるという認識を広げたいと「「学ぶ子育てプロジェクト」と題した教育事業を展開中である。

地域母子保健での開業保健師の役割
「自分の信念を追求できるので楽しい」と、独立して4年目の渡邉さんは語った。その反面、母子保健という無料が当たり前の市場に、有料サービスとして参入する難しさも感じる事が多く、行政からもママ達からも冷たい目を感じる事が多いとの事。しかし、これからは多様化するニーズには、行政、企業、町会、他機関、そして親と手を組み「こどもの育ちを支える」を事業化する発想の展開が必要と語る。
現在、行政や企業とのネットワークを広げながら、町会やマンション管理組合との協働事業にも関わり始めている。赤ちゃんを物理的に支えるのが「抱っこひも 」だとするなら、赤ちゃんの育ちを社会全体で支える事業モデルを作るべく、親・家族・社会に対して関わっている「あかくら」。母子保健領域での開業保健師の存在意義をどのように社会に提示して行けるかが課題である。

相談の得意分野

地域母子保健

相談費用

60分6000円

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